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金利・物価・中国 再エネ事業が「むずかしく」

Three headwinds, one squeeze

再エネ事業が「むずかしく」なっている本当の理由
金利・物価・中国の税、3つの逆風が同時に

2026.06 公開 カテゴリ:再エネ市況 / 太陽光・蓄電池 読了めやす:約7分

3行でわかる

  1. 太陽光や蓄電池の事業は、はじめに大きなお金をかけ、長い年月をかけて回収するビジネスです。
  2. いま、中国の税の見直し(増値税)・物価高(インフレ)・金利の上昇という3つの逆風が同時に効いています。
  3. その結果、つくる費用と借入の利息は上がるのに、売電収入は増えにくい——もうけの幅が両側から狭まっています。

01再エネ事業は「先に払って、あとで回収」

太陽光発電所も蓄電池も、まず大きな初期費用をかけて設備をつくり、そのあと十数年〜20年かけて少しずつ回収していくビジネスです。つまり「最初に重い荷物を背負う長距離走」のような事業です。

たとえると 賃貸用のマンションを先に現金で建てて、毎月の家賃で何十年もかけて取り戻すイメージです。建てる費用や借入の利息が上がると回収は重くなり、逆に家賃(=売電収入)が増えにくいと、もうけは薄くなります。

ここで大事なのが、太陽光の売電価格(FIT・FIPという制度の価格)は、基本的にあらかじめ決まっていて、物価が上がっても自動では増えないという点です。費用は世の中の動きで上下するのに、収入の上限はほぼ固定——この「非対称」が、今回の話のカギになります。

02逆風① 中国の「増値税」見直し ―機材が値上がり

日本に入ってくる太陽光パネルや蓄電池用の電池(セル)の多くは、中国製です。その中国で、輸出するときに戻していた税金(増値税の還付)を、段階的にやめる動きが進んでいます。

「増値税」ってなに? 増値税は、ざっくり言うと中国版の消費税です。これまで中国は、太陽光や電池を輸出するときに、いったんかけた税金の一部を企業に戻して(=還付して)いました。これが製品価格を安く保つ「見えない値引き」として効いていたのです。その値引きが、なくなっていきます。
Table 1輸出時の「税の戻し(還付率)」はこう減っていく
時期太陽光(パネル等)蓄電池(電池製品)
〜2024年11月13% 戻す13% 戻す
2024年12月〜9% に引き下げ9% に引き下げ
2026年4月〜戻しを全面廃止(0%)6% にさらに引き下げ
2027年1月〜(廃止のまま)戻しを全面廃止(0%)

戻していた税の分だけ輸出価格は上がりやすくなり、報道では中国製の太陽光・蓄電池は1割ほど値上がりする可能性が指摘されています。日本でつくる側にとっては、設備の調達費がそのぶん重くなる、ということです。

03逆風② 物価高と円安 ―費用が「二重」で膨らむ

2つめは、身のまわりでも実感する物価高(インフレ)です。発電所をつくる工事費・材料費・人件費は、世の中の値上がりと一緒に上がります。

さらに円安が重なります。中国などから輸入する機材は外貨で値段がつくため、円が安いと、同じ機材でも日本円で払う額は大きくなります。①機材そのものの値上がり(逆風①)×②円安での割高化——費用が二重に膨らむわけです。

ここがいちばん効く 費用は物価高でどんどん上がる。なのに、太陽光の売電収入はあらかじめ決まっていて増えにくい。この「出ていくお金は増える・入るお金は据え置き」というズレが、もうけを静かに削っていきます。

04逆風③ 金利の上昇 ―借入の利息と「求めるリターン」が上がる

3つめは金利です。日本銀行は2026年6月、政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げました。これは約31年ぶりの高さで、今後さらに上がるとの見方もあります。

金利が上がると、再エネ事業には2つの形で効きます。1つは借入の利息が増えること。住宅ローンの金利が上がると毎月の返済が重くなるのと同じです。もう1つは、お金を出す側(投資家・金融機関)が「これくらいは儲かってほしい」と求める水準(ハードル)が上がること。長く時間をかけて回収する事業ほど、この影響は大きくなります。

たとえると 同じ家を買うのでも、ローン金利が0.75%のときと1.0%超のときでは、総返済額がまるで違います。再エネ事業はとくに借入が大きいので、わずかな金利上昇でも採算に響きます。

053つが重なると「もうけの幅」が両側から狭まる

逆風を1つずつ見ると小さく感じても、同時に効くと採算(もうけの幅)は上下から挟まれて狭くなります。下の図は、その仕組みをイメージにしたものです。

Fig.1採算(もうけ)が両側から圧縮されるイメージ

売電収入の上限(=事業の天井)はほぼ据え置き これまで 機材・工事費 利息 もうけ いま 機材・工事費(増値税・物価高・円安で増) 利息(金利↑) もうけ もうけの幅が縮む 収入の天井(固定)
機材・工事費 借入の利息 もうけ(採算)
※ 数値の比率はわかりやすさを優先したイメージです。実際の採算は案件の立地・規模・調達条件・契約により大きく異なります。
Table 23つの逆風 早わかり
逆風いま何が起きている?事業への効き方
増値税
(中国の税)
輸出時の税の戻しを段階的に廃止(太陽光は2026年4月〜0%、電池は2027年1月〜0%)中国製パネル・電池がおよそ1割値上がり→ 機材の調達費が増える
インフレ
+円安
工事・材料・人件費が上昇。さらに円安で輸入機材が割高に初期費用が二重で膨らむ。なのに売電収入は据え置き
政策金利日銀が利上げ(2026年6月に1.0%、約31年ぶりの高さ)借入の利息と、投資家が求めるリターンが上がる

かつては低金利・円高・中国の安い機材という3つの「追い風」で成り立っていた事業が、いまはその3つがそろって逆向きに吹いている——これが今の本質です。

06これまでの流れ ―どう積み重なってきた?

2024.12令和6年
中国が太陽光・電池の輸出時の税の戻しを13%→9%へ引き下げ。機材の「見えない値引き」が縮みはじめる。
2025〜令和7年
国内の物価高と円安が続き、工事費・輸入機材コストが上昇。
2026.04令和8年
中国が太陽光製品の税の戻しを全面廃止(0%)。電池は6%へさらに引き下げ。
2026.06令和8年
日銀が政策金利を1.0%へ利上げ(約31年ぶりの高さ/=いま、ここ)。
2027〜予定
中国が電池の税の戻しも全面廃止(0%)予定。日銀の追加利上げ観測も。

※ 中国の税制は公表済みの方針、日銀の今後の利上げは見通しを含みます。最新の状況は公式発表でご確認ください。

07では、どう向き合う?

逆風がそろったからといって、「再エネはもうダメ」という話ではありません。むしろ、設計の前提を変えれば打ち手はあります。一般の方・土地をお持ちの方が押さえておきたいのは、次のような点です。

Point 1
機材の調達タイミング
税の廃止には時期があります。発注の時期しだいで取得費が変わります。
Point 2
金利を前提に置く
「低金利のまま」を前提にした採算計算は、いまは見直しが要ります。
Point 3
蓄電池の強み
蓄電池の収入は市場と連動する部分があり、固定価格の太陽光より逆風に強い面も。
Point 4
国産との差が縮む
中国製の「安さ」の優位が薄れ、国産・地場調達が見直される余地が出てきます。
7HG からのひとこと

逆風が重なる局面ほど、「なんとなく安いから」「補助があるから」という理由だけで成り立つ事業は残りにくくなります。私たちは、それを悪いことだとは考えていません。地に足のついた、筋のいいプロジェクトだけが続いていく流れだと受け止めています。

セブンヒルズゲートは、太陽光(新規開発・セカンダリー取得)と系統用蓄電池の双方を手がける立場から、金利・物価・調達コストの変化を「リスク」ではなく「設計の前提」として読み解きます。案件や土地のご相談は、お気軽にどうぞ。

出典・参考

  • ジェトロ(日本貿易振興機構)「太陽光発電・電池製品の輸出増値税還付率を調整」ほか(2026年1月)
  • 日経BP メガソーラービジネス「中国、太陽光と蓄電池の増値税還付を廃止」(2026年)
  • 中国財政部・国家税務総局 公告(2024年11月/2026年1月)に関する各種報道
  • 日本経済新聞「1.0%への利上げ決定」日銀金融政策決定会合 関連報道(2026年6月)
  • 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(2026年)
本記事は2026年6月時点で公表されている情報をもとに、一般の方向けにわかりやすく整理したものです。市況・制度・金利は今後変化する可能性があり、図表の数値はイメージを含みます。個別の事業判断にあたっては、最新の公式情報および専門家への確認をおすすめします。
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