0円再生可能エネルギー(第三者所有モデル)
第三者所有モデルとは?
「持たない。でも、使う」という電気の使い方
3行でわかる
- 「持つ人」と「使う人」を分ける仕組み。屋根を貸す側は初期費用ゼロで太陽光の電気を使い、使った分だけ料金を払う。設備を買うのは第三者。
- 成り立つ理由はひとつだけ。系統から買う電気の単価と、太陽光でつくる電気の原価に「差」があること。この差が設備代の回収原資になる。
- 代わりに手放すのは所有権と自由度。およそ10〜20年の長期契約、余剰電力の売電収入、屋根の使い方の決定権が事業者側へ移る。
01ひとことで言えば「役割を分けた」だけ
太陽光発電を導入するとき、これまでは一人の主体が「買う・持つ・直す・使う」を全部背負っていました。第三者所有モデルは、そこに一本の線を引いただけの仕組みです。
線の左側(買う・持つ・直す)は事業者へ。右側(屋根を貸す・使う・払う)は需要家に残る。設備の所有と、電気の利用を切り離した——これが全部です。
02登場人物は三人。ここが一番の要点
「第三者」とは誰か。名前のとおり、設備を使う人でも、設備を売る人でもない、三人目のことです。
資金を出す人がいて、その資金で設備を持つ事業者がいて、屋根を貸して電気を使う需要家がいる。お金と電気がどちらの向きに流れているかを一度つかめば、この仕組みで迷うことはなくなります。
オフィスに置かれた自動販売機に近い。機械を買ったのは飲料会社で、修理するのも飲料会社。ビル側は場所を貸し、飲みたい人が飲んだ分だけ払う。誰も「自販機を買おうか」とは悩まない。第三者所有モデルは、これを発電設備でやっている。
03初期費用ゼロなのに、なぜ成り立つのか
ここが理解の分かれ目です。設備代は消えていません。誰かが払っています。
初期費用は0円。しかも毎月の電気代は今より安くなる。設備は事業者が買っている。——では、その数百万円は誰が、どこから、いつ回収しているのでしょうか。答えを読む前に、10秒だけ考えてみてください。
答えは「差」です。電力会社から買う電気の単価と、屋根の上でつくる電気の原価。この二つには開きがあります。その開きを、需要家の削減分と事業者の回収原資に分け合っている。それだけの構造です。
だから「電気料金が高い場所ほど成立しやすい」という性質が出ます。米国で住宅向けから広がったのも、日本の潜在市場が大きいとされるのも、住宅向け電力料金の単価が相対的に高いからです。2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金は1kWhあたりおよそ4.18円。系統から買う電気の単価を押し上げる要素が増えるほど、この「差」は開きます。
逆に、単価の安い業務用の建物では長らく成立が難しいとされていました。それが2019年ごろから広がったのは、設備の導入コストが下がって「差」が生まれる側に回ったからです。
04呼び名が多すぎる問題を、地図で片づける
TPO、PPA、オンサイト、オフサイト、バーチャル、コーポレート。同じ話をしているのに言葉が増えるのは、切り口が二つ混ざっているからです。「誰が持つか」と「電気がどこを通るか」。それだけ分ければ迷いません。
| 呼び名 | 何を指しているか | ひとことで |
|---|---|---|
| 第三者所有(TPO)モデル | 需要家でも施工会社でもない第三者が設備を所有する形 | 「誰が持つか」の話 |
| PPAモデル | 発電した電気について電力購入契約を結ぶ形 | 「どう売買するか」の話 |
| TPO PPA | 上の二つをセットにした形。実務ではほぼ同義に使われる | 日本で「PPA」と呼ぶものの多く |
| オンサイトPPA | 需要家の屋根・敷地に置き、系統を通さず直接供給する | 目の前の屋根 |
| オフサイトPPA(フィジカル) | 離れた発電所から、系統を介して電気そのものを届ける | 遠くの発電所 |
| オフサイトPPA(バーチャル) | 電気は従来どおり小売から買い、環境価値と差額だけをやり取りする | 電気は動かない |
| コーポレートPPA | 企業が長期契約で再エネを調達する形の総称 | 調達側から見た呼び名 |
「その電気は、系統を通っているか」。通らずに敷地内で完結すればオンサイト。系統を通れば託送料金が乗る。電気自体が動かず環境価値だけが動けばバーチャル。呼び名を覚えるより、この一問を先に立てるほうが早い。
05自己所有・リース・第三者所有を並べる
太陽光の入れ方は三つしかありません。何を払い、何を受け取り、何を手放すかが違うだけです。
| 項目 | 自己所有 | リース | 第三者所有(PPA) |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 必要(一括または借入) | 不要 | 不要 |
| 設備の所有者 | 自分 | リース会社 | PPA事業者 |
| 毎月払うもの | なし(借入なら返済) | 定額のリース料 | 使った電気の量に応じた料金 |
| 余剰電力の売電収入 | 自分 | 契約による | 事業者 |
| 保守・故障対応 | 自分 | 契約による | 事業者 |
| 契約期間の縛り | なし | およそ10〜15年 | およそ10〜20年 |
| 期間満了後 | 自分の資産のまま | 無償譲渡が多い | 無償譲渡が一般的 |
| 会計上の扱い | 資産計上して減価償却 | 原則オンバランス | 契約内容により判断が分かれる |
| 向いているのは | 資金があり、収益も自分で取りたい | 定額で持ちたい | 資金を出さず、電気代を下げたい |
06契約が終わったら、どうなるのか
第三者所有モデルは、10〜20年という時間を丸ごと契約に預ける仕組みです。時間軸で見ると、性格がはっきりします。
07見落とされやすい五つ
「初期費用ゼロ」は入口の話です。判断が要るのは、そのあとの十数年のほうにあります。
加えて、需要家側の審査もあります。屋根の強度・築年数・日当たり・財務状況・事業の継続性。事業者は十数年の回収を前提にするため、屋根を貸す側も見られる立場になります。
「所有しないから資産計上が不要」は、これまでの前提です。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用(2025年4月1日以後開始年度からの早期適用も可)となり、借手のリースは原則としてオンバランスされます。オンサイトPPAは契約の設計次第でこの判定に近づくとの指摘があり、名称ではなく契約の中身で決まります。個別の判断は会計監査人・税理士に確認するのが確実です。
08ここまでの経緯と、いまの位置
太陽光が普及しない理由を、多くの人は「意識が低いから」だと説明してきました。違います。止めていたのは意識ではなく、初期費用という一つの関所です。
第三者所有モデルがしたことは、その関所の手前に立つ人を入れ替えたことだけでした。技術は変わっていない。制度も変わっていない。誰が最初の金を払うかを付け替えた。それだけで、動かなかったものが動き出した。
関所は、越えるものではなく、誰が守るかを決めるものです。次にどの関所を付け替えるか——蓄電池か、屋根そのものか、系統の空きか。問いはいつも、資金の前に立っている人が誰かという一点にあります。
Own nothing. Use everything. The gate decides who pays first.
出典・注記
- 日経BP メガソーラービジネス「第三者所有モデル(TPOモデル)/PPAモデルとは」(2020年6月)
- 太陽光発電協会(JPEA)「PPA/TPOについて」第三者保有モデル契約チェックシート
- 環境省「PPAモデルによる政府施設への太陽光発電設備導入の手引き」(令和6年3月)
- 日本電機工業会(JEMA)「第三者所有モデル/PPAモデル」解説資料
- 東京都「2025年4月から太陽光発電設置義務化に関する新たな制度が始まります」
- 資源エネルギー庁 再生可能エネルギー発電促進賦課金 単価(2026年度)
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月公表/2027年4月1日以後開始事業年度から適用)


