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自然エネルギー

Natural energy

PPA (Power Purchase Agreement)

0円再生可能エネルギー(第三者所有モデル)

Third-Party Ownership

第三者所有モデルとは?
「持たない。でも、使う」という電気の使い方

分野 再生可能エネルギー読了 およそ8分別名 TPO/PPAモデル

3行でわかる

  1. 「持つ人」と「使う人」を分ける仕組み。屋根を貸す側は初期費用ゼロで太陽光の電気を使い、使った分だけ料金を払う。設備を買うのは第三者。
  2. 成り立つ理由はひとつだけ。系統から買う電気の単価と、太陽光でつくる電気の原価に「差」があること。この差が設備代の回収原資になる。
  3. 代わりに手放すのは所有権と自由度。およそ10〜20年の長期契約、余剰電力の売電収入、屋根の使い方の決定権が事業者側へ移る。

01ひとことで言えば「役割を分けた」だけ

太陽光発電を導入するとき、これまでは一人の主体が「買う・持つ・直す・使う」を全部背負っていました。第三者所有モデルは、そこに一本の線を引いただけの仕組みです。

線の左側(買う・持つ・直す)は事業者へ。右側(屋根を貸す・使う・払う)は需要家に残る。設備の所有と、電気の利用を切り離した——これが全部です。

Fig. 1一本の線を引く。それだけの構造

従来 ─ 自己所有需要家(あなた)買う持つ直す使う所有も、責任も、費用も、ぜんぶ自分。初期費用:まとまった一括の支出が要る第三者所有 ─ 分ける事業者(設備の所有者)買う持つ直す電気料金需要家(あなた)屋根を貸す使う払う初期費用:0円。使った電気の分だけ払う

「第三者所有(Third-Party Ownership:TPO)」は所有の話。「PPA(Power Purchase Agreement=電力購入契約)」は売買の話。日本で使われる「PPAモデル」は、この二つがセットになったものを指すことがほとんど。

02登場人物は三人。ここが一番の要点

「第三者」とは誰か。名前のとおり、設備を使う人でも、設備を売る人でもない、三人目のことです。

資金を出す人がいて、その資金で設備を持つ事業者がいて、屋根を貸して電気を使う需要家がいる。お金と電気がどちらの向きに流れているかを一度つかめば、この仕組みで迷うことはなくなります。

Fig. 2お金と電気は、どちら向きに流れているか

資金の出し手投資家・金融機関(大手なら自社資金)PPA事業者設備を所有する設置・保守・保険需要家(あなた)屋根・敷地を提供電気を使う資金返済・配当設置・保守電気電気料金電力系統(電力会社)不足分の供給/余剰の受け入れ余剰は事業者が売電夜や雨の不足分は系統から

大手企業が自社資金でこれを提供する場合、外部から「第三者」の資金を集める必要がない。そのため同じ形でも「PPAモデル」と呼ばれることが多い。
たとえるなら
オフィスに置かれた自動販売機に近い。機械を買ったのは飲料会社で、修理するのも飲料会社。ビル側は場所を貸し、飲みたい人が飲んだ分だけ払う。誰も「自販機を買おうか」とは悩まない。第三者所有モデルは、これを発電設備でやっている。

03初期費用ゼロなのに、なぜ成り立つのか

ここが理解の分かれ目です。設備代は消えていません。誰かが払っています。

ここで一度、手を止めて
初期費用は0円。しかも毎月の電気代は今より安くなる。設備は事業者が買っている。——では、その数百万円は誰が、どこから、いつ回収しているのでしょうか。答えを読む前に、10秒だけ考えてみてください。

答えは「差」です。電力会社から買う電気の単価と、屋根の上でつくる電気の原価。この二つには開きがあります。その開きを、需要家の削減分と事業者の回収原資に分け合っている。それだけの構造です。

Fig. 3回収の原資は「単価の差」しかない

① 系統から買うと毎月の電気料金(この幅を払う)② 第三者所有だとあなたが払う分(単価は下がる)浮く分③ その中身発電・設置・保守の原価事業者の取り分浮く分

幅は概念であり、実際の比率は契約・地域・需要形状・設備価格で変わる。差が小さい、あるいは無い場合、この仕組みは成立しない。

だから「電気料金が高い場所ほど成立しやすい」という性質が出ます。米国で住宅向けから広がったのも、日本の潜在市場が大きいとされるのも、住宅向け電力料金の単価が相対的に高いからです。2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金は1kWhあたりおよそ4.18円。系統から買う電気の単価を押し上げる要素が増えるほど、この「差」は開きます。

逆に、単価の安い業務用の建物では長らく成立が難しいとされていました。それが2019年ごろから広がったのは、設備の導入コストが下がって「差」が生まれる側に回ったからです。

04呼び名が多すぎる問題を、地図で片づける

TPO、PPA、オンサイト、オフサイト、バーチャル、コーポレート。同じ話をしているのに言葉が増えるのは、切り口が二つ混ざっているからです。「誰が持つか」と「電気がどこを通るか」。それだけ分ければ迷いません。

Tab. 1呼び名の地図
呼び名 何を指しているか ひとことで
第三者所有(TPO)モデル 需要家でも施工会社でもない第三者が設備を所有する形 「誰が持つか」の話
PPAモデル 発電した電気について電力購入契約を結ぶ形 「どう売買するか」の話
TPO PPA 上の二つをセットにした形。実務ではほぼ同義に使われる 日本で「PPA」と呼ぶものの多く
オンサイトPPA 需要家の屋根・敷地に置き、系統を通さず直接供給する 目の前の屋根
オフサイトPPA(フィジカル) 離れた発電所から、系統を介して電気そのものを届ける 遠くの発電所
オフサイトPPA(バーチャル) 電気は従来どおり小売から買い、環境価値と差額だけをやり取りする 電気は動かない
コーポレートPPA 企業が長期契約で再エネを調達する形の総称 調達側から見た呼び名
見分け方はひとつ
「その電気は、系統を通っているか」。通らずに敷地内で完結すればオンサイト。系統を通れば託送料金が乗る。電気自体が動かず環境価値だけが動けばバーチャル。呼び名を覚えるより、この一問を先に立てるほうが早い。

05自己所有・リース・第三者所有を並べる

太陽光の入れ方は三つしかありません。何を払い、何を受け取り、何を手放すかが違うだけです。

Tab. 2三つの入れ方の比較
項目 自己所有 リース 第三者所有(PPA)
初期費用 必要(一括または借入) 不要 不要
設備の所有者 自分 リース会社 PPA事業者
毎月払うもの なし(借入なら返済) 定額のリース料 使った電気の量に応じた料金
余剰電力の売電収入 自分 契約による 事業者
保守・故障対応 自分 契約による 事業者
契約期間の縛り なし およそ10〜15年 およそ10〜20年
期間満了後 自分の資産のまま 無償譲渡が多い 無償譲渡が一般的
会計上の扱い 資産計上して減価償却 原則オンバランス 契約内容により判断が分かれる
向いているのは 資金があり、収益も自分で取りたい 定額で持ちたい 資金を出さず、電気代を下げたい

06契約が終わったら、どうなるのか

第三者所有モデルは、10〜20年という時間を丸ごと契約に預ける仕組みです。時間軸で見ると、性格がはっきりします。

Fig. 4時間で見た第三者所有モデル

契約期間 およそ10〜20年Year 0契約・設置Year 10-20契約満了初期費用 0円所有は事業者毎月:使った分の電気料金を事業者へ余剰の売電収入も事業者へ途中解約は原則できない(残りを一括で精算)無償譲渡が一般的以降は自己所有・保守も自分

契約満了後の扱い(無償譲渡/有償譲渡/撤去)は契約ごとに異なる。撤去費用の負担者を含め、契約書で必ず確認する項目。

07見落とされやすい五つ

「初期費用ゼロ」は入口の話です。判断が要るのは、そのあとの十数年のほうにあります。

01
屋根の寿命
15〜20年先まで葺き替えや大規模改修の予定はないか。屋根の下の建物の方が先に寿命を迎えることがある。
02
昼の使い方
発電するのは昼。昼にどれだけ使うかで自家消費率が決まり、単価の削減幅が決まる。土日休みの工場は要注意。
03
単価の決まり方
固定か変動か。燃料費調整額や賦課金の扱いはどうか。「安くなる」の中身が契約書のどこに書かれているか。
04
途中でやめるとき
移転・売却・閉鎖・事業縮小のとき、いくら払うことになるか。原則は残存価値の一括精算。
05
満了後の扱い
誰の所有になるか。撤去する場合の費用は誰が負うか。老朽化した設備を引き取る場合の保守費も自分に移る。

加えて、需要家側の審査もあります。屋根の強度・築年数・日当たり・財務状況・事業の継続性。事業者は十数年の回収を前提にするため、屋根を貸す側も見られる立場になります。

会計の話をひとつ
「所有しないから資産計上が不要」は、これまでの前提です。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用(2025年4月1日以後開始年度からの早期適用も可)となり、借手のリースは原則としてオンバランスされます。オンサイトPPAは契約の設計次第でこの判定に近づくとの指摘があり、名称ではなく契約の中身で決まります。個別の判断は会計監査人・税理士に確認するのが確実です。

08ここまでの経緯と、いまの位置

2010s米国
住宅太陽光をサービスとして広げた。SolarCity 社などが「初期費用なし・電気料金の削減」を掲げ、環境意識の高くない層にも届いた。
2016日本・住宅
国内で住宅向けサービスが始まる。日本エコシステム、坊ちゃん電力など中堅企業が先行し、その後に大手が続いた。
2019日本・業務用
業務用建物へ広がる。設備コストの低下により、単価の安い業務用でも需要家側にコストメリットが出せるようになった。
20254月・東京都
新築住宅等への設置義務制度が開始。対象は都内で年間供給延床面積が一定規模以上の大手ハウスメーカー等。リース等の初期費用ゼロ事業者への助成も設けられた。
2026いま
再エネ賦課金は1kWhあたりおよそ4.18円。系統から買う電気の単価が上がるほど、この構造の合理性は増す。蓄電池を併設した形も広がりつつある。
20274月〜
新リース会計基準が強制適用。「オフバランスだから」を理由にした導入判断は、契約設計の確認とセットになる。
A Note from 7HG

太陽光が普及しない理由を、多くの人は「意識が低いから」だと説明してきました。違います。止めていたのは意識ではなく、初期費用という一つの関所です。

第三者所有モデルがしたことは、その関所の手前に立つ人を入れ替えたことだけでした。技術は変わっていない。制度も変わっていない。誰が最初の金を払うかを付け替えた。それだけで、動かなかったものが動き出した。

関所は、越えるものではなく、誰が守るかを決めるものです。次にどの関所を付け替えるか——蓄電池か、屋根そのものか、系統の空きか。問いはいつも、資金の前に立っている人が誰かという一点にあります。

Own nothing. Use everything. The gate decides who pays first.

出典・注記

  • 日経BP メガソーラービジネス「第三者所有モデル(TPOモデル)/PPAモデルとは」(2020年6月)
  • 太陽光発電協会(JPEA)「PPA/TPOについて」第三者保有モデル契約チェックシート
  • 環境省「PPAモデルによる政府施設への太陽光発電設備導入の手引き」(令和6年3月)
  • 日本電機工業会(JEMA)「第三者所有モデル/PPAモデル」解説資料
  • 東京都「2025年4月から太陽光発電設置義務化に関する新たな制度が始まります」
  • 資源エネルギー庁 再生可能エネルギー発電促進賦課金 単価(2026年度)
  • 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月公表/2027年4月1日以後開始事業年度から適用)
本ページは第三者所有モデルの一般的な仕組みを説明することを目的としたものであり、特定の商品・契約・事業者の勧誘を目的とするものではありません。また、税務・会計・法務に関する助言ではありません。契約期間・単価の決定方法・満了後の取扱い・解約条件は事業者および契約ごとに異なります。記載の制度・単価は執筆時点の情報に基づくもので、今後変更される場合があります。個別の判断にあたっては、契約書の内容および専門家の確認を経ることをおすすめします。