小水力 マイクロ水力
水は、止まらない。小水力・マイクロ水力の開発を進めています。
3行でわかる
- 小水力は落差と流量さえあれば昼も夜も、季節を通じて発電する。設備利用率はおよそ60%で、事業用太陽光のおよそ3倍にあたる。
- 全国の未開発の包蔵水力はおよそ19GW・2,550地点。ただし残っているのは小規模で奥地の地点が中心で、机上の数字は当てにならない。一件ごとの実測がすべてを決める。
- 関所は技術ではなく水利権と地元合意にある。農業用水などの既許可の流水を使う従属発電なら、許可制ではなく登録制で、標準処理期間はおよそ1ヶ月。
01小水力・マイクロ水力とは何か
ダムを造って水を貯めるのではなく、すでに流れている水の落差だけを借りて発電する。それが小水力・マイクロ水力です。
出力の区分に法律上の定義はありませんが、実務では 1,000kW 未満を「小水力」、100kW 未満程度を「マイクロ水力」と呼び分けます。FIT 制度の区分では 1,000kW 未満・200kW 未満に価格の段が置かれており、事業の設計はこの段を意識して行います。
発電量を決めるのは、たった二つの数字です。水がどれだけ落ちるか(有効落差 H)と、水がどれだけ流れるか(流量 Q)。この二つを掛け合わせたものが出力になります。
太陽光が「昼だけ開く店」だとすれば、小水力は「年中無休の店」です。品揃え(出力)は小さくても、閉まっている時間がほとんどない。だから同じ設備容量でも、年間の売上(発電量)はまるで違います。
02落差は、すでにそこにある
新しく落差を造る必要はありません。日本の国土には、誰も使っていない落差が構造物として無数に残されています。
農業用水路の落差工、砂防堰堤、上水道の減圧弁、休止したままの導水路。いずれも本来の目的のために造られ、いまも維持されている構造物です。そこを通る水のエネルギーは、現在ほとんどが熱と音になって捨てられています。7HG が入っていくのは、この「捨てられている側」です。
領域ごとに、所有者・管理者・許認可の相手方がすべて異なります。技術の難易度より、この「誰と話すか」の難易度のほうが案件を左右します。
03年中無休であることの意味
小水力の事業性は、買取価格そのものよりも設備利用率から説明したほうが正確です。
設備利用率とは、設備が持つ最大出力に対して、実際に年間どれだけ発電できたかの割合です。FIT の想定では中小水力(200kW 未満)がおよそ60%、事業用太陽光(地上設置 50kW 以上)は2026年度の想定でおよそ18%。同じ 1,000kW の設備でも、年間に生む電力量はおよそ3倍の開きがあります。
この差が、建設単価の高さを一部吸収します。中小水力の建設費は 200kW 未満の実績平均でおよそ177万円/kW と、政府想定を大きく上回る水準にあります。それでも案件が成立しうるのは、稼働時間の長さと、設備の寿命の長さによるものです。主要機器は適切な補修を続ければ数十年の運転に耐えます。
04制度と価格(2026年度)
FIT の調達価格は出力区分と、新設か既設導水路活用型かで分かれます。調達期間はいずれも20年です。
| 出力区分 | 新設 | 既設導水路活用型 | FIT の区分 |
|---|---|---|---|
| 200kW未満 | 34円/kWh | 25円/kWh | 地域活用要件あり |
| 200kW以上 1,000kW未満 | 29円/kWh | 21円/kWh | 地域活用要件あり |
| 1,000kW以上 5,000kW未満 | 23円/kWh | 14円/kWh | FIT / FIP 選択 |
| 5,000kW以上 30,000kW未満 | 16円/kWh | 9円/kWh | FIT / FIP 選択 |
1,000kW 未満で FIT の新規認定を受ける場合、発電した電気を地域で使うこと(自家消費・地域消費)や、災害時に自立運転できることが求められます。つまりこの規模帯の小水力は、制度の側からすでに地域で使う電源として位置づけられている、ということです。売電だけを目的に組み立てると要件に届きません。
なお 1,000kW 未満区分の2028年度以降の扱い、1,000kW 以上区分の2027年度以降の扱いは、いずれも今後の調達価格等算定委員会で検討されるとされています。現時点では方針段階であり、確定したものとして事業計画に織り込むことは避けています。
05本当の関所は、水利権にある
小水力が伸びにくいと言われてきた理由の大半は、水車ではなく手続と合意の側にあります。
河川の水を使うには水利権が要ります。ここで決定的なのは、その水がすでに誰かの許可を受けて流れているかどうかです。農業用水や水道用水など、既に許可を得た流水をそのまま使って発電する場合を従属発電と呼びます。河川環境に新たな影響を与えないため、2013年12月の河川法改正で許可制に代えて登録制が導入され、提出図書と処理期間が大きく圧縮されました。
| 区分 | どういう場合か | 手続 | 標準処理期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 従属発電 | 農業用水・水道用水など、既に許可を得た流水を使って発電する | 登録制 | およそ1ヶ月 |
| 慣行水利権(従属関係が明確) | 期別の取水量が明確で、発電用水利権との従属関係が確認できる | 登録制 | およそ1ヶ月 |
| 非従属発電 | 河川から新たに取水して発電する | 許可制 | およそ3ヶ月〜 |
| 河川区域外の設置 | 用水路の途中など、河川区域の外で完結する | 河川法手続は原則不要 | ― |
ただし、標準処理期間は申請してからの期間です。実務でそれ以上の時間がかかるのは、その前段にある予備協議と地元合意です。水利組合、土地改良区、河川管理者、施設管理者。この人たちが納得しないかぎり、申請書は出せません。7HG が最初に時間を使うのは、図面ではなくここです。
06開発の進め方
小水力の開発が長期にわたるのは、一年分の水を見ないと判断できないからです。工程はここから逆算します。
地点の発掘と机上評価、流量観測の設計と実施、水利権者・河川管理者との協議、FIT/FIP 認定と系統連系、EPC の組成、そして運転開始後の資産管理まで。案件の一部だけを切り出すのではなく、関所を通しきるところまでを引き受けます。
07こういう方へ
地点の情報(おおよその場所・落差・水量・現在の用途)をお知らせいただければ、まず机上での成立可能性をお返しします。成立しない場合は、その理由もあわせてお伝えします。
水は、誰かが見ていなくても流れ続けています。落差は、私たちが気づくずっと前からそこにありました。使われていないのは、資源が無いからではなく、通すべき関所が開いていないからです。
水利権、地元合意、流量の実測、系統の空き。どれも派手ではありませんが、この四つが揃った瞬間に、捨てられていた落差は20年の収益に変わります。7HG は、その関所を一つずつ開ける側に立ちます。
The water was always falling. We only opened the gate.
出典・注記
- 経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」(2026年3月19日)
- 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月5日)
- 資源エネルギー庁「中小水力発電の導入促進に向けた手引き」(2024年2月)— 未開発包蔵水力 19GW・2,550地点(2021年3月末時点)
- 国土交通省 水管理・国土保全局「小水力発電と水利使用手続」「小水力発電設置のための手引き(第4版)」
- 農林水産省 農村振興局「農業水利施設を活用した発電用水利権の取得について」
- 資源エネルギー庁 調達価格等算定委員会資料(2024年11月)— 200kW未満の建設費実績平均 およそ177万円/kW


