農業にける廃棄物の有効活用
農業における廃棄物の有効活用
——「捨てる」を「活かす」に変える
3行でわかる事業概要
- 農業の現場からは、稲わら・もみ殻・規格外作物・食品くずなど、大量の「使われていない有機物」が毎年生まれている。野焼き(野外焼却)は法律で原則禁止のため、放っておくと処分費がかかる「コスト」になる。
- これらは、見方を変えれば飼料・肥料・エネルギー・素材になる資源。価値の高い使い道から順に取り出す「カスケード利用」で、同じ一つの廃棄物から何度も価値を引き出せる。
- サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、「とって・つくって・捨てる」直線を、輪に変える考え方。農業廃棄物を地域で回す仕組みは、処分費の削減・新たな収入・地域の自立につながる。
01そもそも「サーキュラーエコノミー」とは
難しい言葉に聞こえますが、中身はシンプルです。「捨てる」で終わらせず、もう一度使えるように回す——それだけです。
これまでの経済は、地面から資源を採取し、製品を生産し、使って廃棄する、という一方通行でした。これを直線型(リニア)経済と呼びます。出口が「ごみ」しかないので、資源は減り、処分の負担は増え続けます。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、この一方通行を輪にします。使い終わったものを回収し、別の用途に作り変えて、もう一度経済の中へ戻す。捨てていたものが、次の入口になります。
02農業の「廃棄物」は、じつは資源
田んぼや畑からは、毎年とても大きな量の有機物が出ます。代表的なものを挙げると——
稲わら(稲の茎や葉)は国内でおよそ年920万トン、もみ殻(玄米を包む殻)はおよそ年200万トン発生するとされます。さらに、形が悪い・傷があるといった理由で出荷されない規格外作物や、加工・流通・家庭で食べられずに捨てられる食品ロスもあります。食品ロスは令和5年度でおよそ464万トンと推計されています。
これだけの量が、これまで「邪魔なもの」「お金を払って捨てるもの」として扱われてきました。とくに野焼き(野外での焼却)は、煙やにおいの問題から廃棄物処理法で原則禁止されており、安易に燃やすこともできません。
廃棄物は、たとえるなら「中身の入ったまま捨てられる弁当箱」。箱(処分の手間)にばかり目が行きますが、中にはまだ食べられるおかず(栄養・エネルギー・素材)が残っています。サーキュラーエコノミーは、その中身を取り出してから箱をたたむ発想です。
03価値を捨てない「カスケード利用」
同じ廃棄物でも、使い道によって引き出せる価値の大きさは変わります。そこで大切なのが「カスケード利用」という考え方です。
カスケード(cascade)とは「段々の滝」のこと。価値の高い使い道から順に取り出し、そこで使い切れなかった分を一段下が受け取る——という流れをつくります。一気にエネルギーとして燃やしてしまうのではなく、まず食べられるものは食べ、無理なら飼料に、それも無理なら肥料に、最後にエネルギーや炭に。こうすると、一つの資源から何段にもわたって価値を引き出せます。
04主な「出口」——5つの活かし方
農業廃棄物を活かすルートは、大きく次の5つに整理できます。
中でも、地域で資源を回す象徴的な仕組みがメタン発酵(嫌気性消化)です。残渣や家畜のふん尿を、酸素のない密閉タンクで微生物に分解させると、燃えるガス(バイオガス)が出ます。これで発電・熱利用ができ、分解後に残る液体(消化液)は、栄養豊富な液肥として畑へ戻せます。一つの設備でエネルギーと肥料の両方が取れる点が特徴です。
05「コスト」が「収入」に変わる
サーキュラーエコノミーは、環境にやさしいだけの話ではありません。お金の流れが反対向きになるのが要点です。
これまで廃棄物は、処分費を「払う」対象でした。これを資源として回すと、(1) 処分費がそのまま減る、(2) 売電収入・堆肥や飼料の販売など新しい収入が生まれる、(3) 化学肥料や輸入飼料の購入を抑えられる、という三方向の効果が出ます。出ていくお金が減り、入ってくるお金が増える。これが循環の経済的な意味です。
下の表は、活かし方ごとに「主に何になるか」を整理したもの。エネルギー=電気・熱・ガス、マテリアル=肥料・飼料・素材。どちらが正解という話ではなく、地域の資源量と需要に合わせて組み合わせるのが現実的。
| 資源 | 主な使い道 | 区分 |
|---|---|---|
| 稲わら | すき込みで土に還す/堆肥・敷料/粗飼料 | マテリアル |
| もみ殻 | くん炭・暗渠資材/培地/シリカ等の素材 | マテリアル |
| 規格外作物・残渣 | 飼料化(エコフィード)/堆肥化 | マテリアル |
| 食品くず・ふん尿 | メタン発酵 → バイオガス発電+液肥 | エネルギー |
| 剪定枝・木質分 | チップ・ペレット化 → 熱・発電/バイオ炭 | エネルギー |
06制度のうごき
国の政策も、廃棄物を「処理する」から「資源として活かす」方向へ進んできました。主な流れを並べると——
※ここで触れた目標値や制度は方針・推計の段階を含み、今後見直されることがあります。最新の数値は各省庁の公表資料をご確認ください。
私たちは、ものの流れには必ず「分かれ目」があると考えています。捨てるか、活かすか。その分かれ目に立つのが、関所(ゲート)の役割です。
農業の廃棄物は、関所の手前では「処分すべき荷物」に見えます。けれど関所をくぐらせ、価値の高い順に荷をほどいていけば、飼料になり、肥料になり、エネルギーになり、最後は土に還ります。Re:design(流れを描き直す)から、Re:born(資源として生まれ直す)へ。一つの地域の中で、その輪を閉じる設計を、私たちは事業として担います。
From waste to resource — close the loop, one field at a time.
出典・注記
- 農林水産省「バイオマスの活用の推進」「バイオマス事業化戦略」。
- 農林水産省「家畜排せつ物の発生と管理の状況」(年間発生量・バイオマス資源量の概数)。
- 農林水産省・環境省・消費者庁「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)」、消費者庁「食品ロス削減関係参考資料(令和7年6月版)」。
- 農林水産省・各自治体資料(稲わら・もみ殻の発生量および利用方法、すき込み・くん炭等)。
- 環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(野外焼却の原則禁止)、農林水産省「みどりの食料システム戦略」。


