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空き家が減らないのは

Why empty homes keep piling up

空き家が減らないのは、人口のせいだけじゃない
「壊すと税金6倍」のなぜ

2026.06 公開 カテゴリ:地方創生 / 住まいと制度 読了めやす:約7分

3行でわかる

  1. 全国の空き家は約900万戸で過去最多。でも空き家率(13.8%)は、この10年ほぼ横ばいです。
  2. 増える本当の理由は「人が減るのに、家が建ち続ける」こと。その背中を押しているのが、じつは3つの税のしくみです。
  3. だから対策の本筋は、補助金を足すより、「壊すな・建てろ」を生む税のゆがみを外す“引き算”にあります。

01空き家って、そんなに増えてるの?

2023年の調査で、全国の空き家はおよそ900万戸。過去最多を更新しました。ニュースだけ見ると「ついに大変なことに」と感じます。でも、住宅全体に占める割合(空き家率)は13.5%→13.6%→13.8%とほぼ横ばい。じわじわ増えてはいるものの、急増しているわけではありません。

たとえると バケツの水だと思ってください。人口が減るのは、バケツの底から水が抜けていくようなもの。ところが日本では、上から新しい水(=新築の家)も注ぎ続けています。抜ける量より注ぐ量が多ければ、水(=空き家)は溜まり続けます。つまり空き家は「人が減ったから」だけでなく、「人が減るのに家が増え続けている」から溜まるのです。

実際、住宅の総数はこの5年でおよそ4%増えました。人は減っているのに、家は増えている。空き家を“なくす”話の前に、まずなぜ家が建ち続けるのかを見る必要があります。

02ゆがみ①「壊すと損」のなぜ

使わない空き家を、なぜ人は壊さず放っておくのでしょう。理由のひとつは、はっきりしています。壊すと、土地の税金が跳ね上がるからです。

家が建っている土地は、固定資産税が最大で6分の1に安くなる特例があります(住宅用地特例)。ところが空き家を解体して更地にすると、この割引が消えて元に戻る。結果、こうなります。

Fig.1同じ土地でも、壊すと税金は跳ね上がる(概算イメージ)

空き家の まま残す 約 2.3 万円 / 年 解体して 更地にする 約 14 万円 / 年 おなじ土地なのに、およそ 6 倍に
家が建っている=割引あり(安い) 更地=割引が外れる(高い)
※ 土地評価額1,000万円・住宅用地特例(最大1/6)で試算した概算イメージです。実際は負担調整のしくみがあり、3〜4倍にとどまる例も多くあります。向き(壊すと高くなる)は同じです。
ここがポイント 使わない家でも、壊さず置いておく方が税金は安い。言いかえると、いまの制度は「解体」を罰しているのです。これでは、空き家を片づけようという気持ちが起きにくくなります。

なお2023年12月の法改正で、放置されてボロボロになった空き家(管理不全空き家など)は、壊さなくても割引が外れるようになりました。「放置し得」をなくす、ようやくの一歩です。

03ゆがみ②「建てろ」のなぜ

もうひとつのゆがみが、誰も住まない賃貸アパートを建てさせる力です。じつは空き家のほぼ半分は「賃貸用」。その中には、入居者のためではなく、節税のために建てられたものがかなり混じっています。カギは相続税です。

Table 1「現金」と「アパート」、相続税の見え方
 現金1億円のまま同じ1億円でアパートを建てる
相続税の評価額1億円(まるごと課税)約4,000万円まで圧縮
なぜ下がる?建物は建築費の5〜6割でしか評価されず、「貸している」ことでさらに減額されるため
借金して建てるとその借金も財産から差し引け、もっと下がる
何が起きるか 評価額が下がる=相続税が減る、ので「相続対策にアパートを」と勧められます。問題は、入居者がいるかどうかは二の次で建ててしまうこと。こうして、借り手のいない賃貸住宅が各地に積み上がっていきます。

さらに3つ目として、新築びいきもあります。住宅ローン控除や新築の固定資産税の軽減など、優遇が新築に手厚いぶん、中古や改修が選ばれにくい。結果、中古市場が育たず、使える家が余ったまま新築だけが増えていきます。

04世界はどうしてる?

海外の空き家対策は、大きく3つの型に分かれます。日本でも話題の「1ユーロ住宅」から、課税、行政による買い取り再生まで。並べてみると、それぞれの得意・不得意が見えてきます。

Table 2世界の空き家対策、3つの型
やり方の例効きめと限界
格安で手放すイタリアの1ユーロ住宅、英国の1ポンド住宅。改修と居住を条件に、ほぼタダで譲る参入の壁を下げて移住者を呼び込む。立地が生きた地域でこそ効く
税で締める空き家への課税強化。京都市は全国初の「空き家税」を導入予定放置のコストを所有者本人に戻す。即効性は高いが新築は止まらない
行政が買い再生米国のランドバンク。市が買い上げて再生・転用(デトロイトの事例など)持ち主不明などで動かせない物件を市場に戻す“触媒”役

注目したいのは、優れた事例ほど「行政が直してあげる」のではなく、放置を割に合わなくし、止まった物件を民間が動かせるようにする——その後押し役に徹している点です。

05いつから? ―これまでの流れ

2015平成27年
空家対策特別措置法が施行。危険な「特定空き家」に、自治体が指導・命令できるように。
2018平成30年
空き家は約849万戸・13.6%(5年ごとの住宅・土地統計調査)。
2023令和5年
過去最多の約900万戸・13.8%。数は増えたが、率はほぼ横ばい。
2023.12令和5年
法改正。放置された空き家は、壊さなくても税の割引が外れるように。
2026〜予定
京都市で全国初の「空き家税」導入の予定(=いま、ここ)。

※ 京都市の空き家税(非居住住宅利活用促進税)は導入が決まっていますが、開始時期には観測の幅があります。最新の市の公表をご確認ください。

06じゃあ、どうすれば? ―“引き算”という発想

空き家対策というと、「補助金を出す」「新しい税を作る」という足し算が思い浮かびます。でも、根っこに近い解決はむしろ逆です。いま国が払っている税の割引(壊すと損・建てると得・新築びいき)を外す“引き算”です。

新しい財源も、新しい役所もいりません。すでにある「壊すな・建てろ」という後押しを抜くだけで、解体や中古活用が割に合うようになり、家の建ちすぎにブレーキがかかります。

大事な前提 人口が減る社会では、住宅はどうしても余ります。問われているのは「空き家をゼロにできるか」ではなく、秩序立てて畳めるか、放置して腐らせるか。すべての家を埋めようとするのを、いったんやめることが出発点です。

07畳んだ土地は、価値に変えられる

立地が生きている街なかの空き家は、リノベして住まいとして再生する。一方で、人がもう住まなくなった土地は、無理に住宅で埋めず“畳む”——解体して農地や自然に戻すか、エネルギーを生む土地にする。この二段構えが、人口の減少と喧嘩しない数少ない道です。

人が住まなくなった土地に太陽光や蓄電所を置くというのは、過疎・空き家の「出口」と、再生可能エネルギーの「入口」が、同じ場所で交わるということ。畳むことは、終わりではなく次の用途のはじまりにできます。

7HG からのひとこと

私たちは、空き家を「とにかく埋める」ことだけが答えだとは考えていません。立地が生きた家は再生し、立地が失われた土地は住宅から畳んで、太陽光・蓄電・農地・自然へと戻していく。地域と一緒に、出口を設計することが大切だと思っています。

セブンヒルズゲートは、再生可能エネルギーと地方創生の現場に立つ立場から、こうした制度や土地の論点を「むずかしい話」で終わらせず、一緒に読み解きます。土地・地域のご相談は、お気軽にどうぞ。

出典・参考

  • 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年)/「平成30年住宅・土地統計調査」(2018年)
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」関連情報(2023年12月改正を含む)
  • 京都市「非居住住宅利活用促進税(いわゆる空き家税)」関連資料
  • 各国・自治体の空き家対策に関する公表情報(イタリア/英国/米国 ほか)
本記事は2026年6月時点で公表されている情報をもとに、一般向けにわかりやすく整理したものです。固定資産税・相続税の税額や評価額は、しくみの方向性を伝えるための概算イメージであり、負担調整のしくみや物件・適用要件によって実際の金額は大きく異なります。空き家税の開始時期など制度の細部は今後変わる可能性があります。個別の判断にあたっては、最新の公式情報および税理士・弁護士等の専門家への確認をおすすめします。
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