空き家が減らないのは
空き家が減らないのは、人口のせいだけじゃない
「壊すと税金6倍」のなぜ
3行でわかる
- 全国の空き家は約900万戸で過去最多。でも空き家率(13.8%)は、この10年ほぼ横ばいです。
- 増える本当の理由は「人が減るのに、家が建ち続ける」こと。その背中を押しているのが、じつは3つの税のしくみです。
- だから対策の本筋は、補助金を足すより、「壊すな・建てろ」を生む税のゆがみを外す“引き算”にあります。
01空き家って、そんなに増えてるの?
2023年の調査で、全国の空き家はおよそ900万戸。過去最多を更新しました。ニュースだけ見ると「ついに大変なことに」と感じます。でも、住宅全体に占める割合(空き家率)は13.5%→13.6%→13.8%とほぼ横ばい。じわじわ増えてはいるものの、急増しているわけではありません。
実際、住宅の総数はこの5年でおよそ4%増えました。人は減っているのに、家は増えている。空き家を“なくす”話の前に、まずなぜ家が建ち続けるのかを見る必要があります。
02ゆがみ①「壊すと損」のなぜ
使わない空き家を、なぜ人は壊さず放っておくのでしょう。理由のひとつは、はっきりしています。壊すと、土地の税金が跳ね上がるからです。
家が建っている土地は、固定資産税が最大で6分の1に安くなる特例があります(住宅用地特例)。ところが空き家を解体して更地にすると、この割引が消えて元に戻る。結果、こうなります。
Fig.1同じ土地でも、壊すと税金は跳ね上がる(概算イメージ)
なお2023年12月の法改正で、放置されてボロボロになった空き家(管理不全空き家など)は、壊さなくても割引が外れるようになりました。「放置し得」をなくす、ようやくの一歩です。
03ゆがみ②「建てろ」のなぜ
もうひとつのゆがみが、誰も住まない賃貸アパートを建てさせる力です。じつは空き家のほぼ半分は「賃貸用」。その中には、入居者のためではなく、節税のために建てられたものがかなり混じっています。カギは相続税です。
| 現金1億円のまま | 同じ1億円でアパートを建てる | |
|---|---|---|
| 相続税の評価額 | 1億円(まるごと課税) | 約4,000万円まで圧縮 |
| なぜ下がる? | ― | 建物は建築費の5〜6割でしか評価されず、「貸している」ことでさらに減額されるため |
| 借金して建てると | ― | その借金も財産から差し引け、もっと下がる |
さらに3つ目として、新築びいきもあります。住宅ローン控除や新築の固定資産税の軽減など、優遇が新築に手厚いぶん、中古や改修が選ばれにくい。結果、中古市場が育たず、使える家が余ったまま新築だけが増えていきます。
04世界はどうしてる?
海外の空き家対策は、大きく3つの型に分かれます。日本でも話題の「1ユーロ住宅」から、課税、行政による買い取り再生まで。並べてみると、それぞれの得意・不得意が見えてきます。
| 型 | やり方の例 | 効きめと限界 |
|---|---|---|
| 格安で手放す | イタリアの1ユーロ住宅、英国の1ポンド住宅。改修と居住を条件に、ほぼタダで譲る | 参入の壁を下げて移住者を呼び込む。立地が生きた地域でこそ効く |
| 税で締める | 空き家への課税強化。京都市は全国初の「空き家税」を導入予定 | 放置のコストを所有者本人に戻す。即効性は高いが新築は止まらない |
| 行政が買い再生 | 米国のランドバンク。市が買い上げて再生・転用(デトロイトの事例など) | 持ち主不明などで動かせない物件を市場に戻す“触媒”役 |
注目したいのは、優れた事例ほど「行政が直してあげる」のではなく、放置を割に合わなくし、止まった物件を民間が動かせるようにする——その後押し役に徹している点です。
05いつから? ―これまでの流れ
※ 京都市の空き家税(非居住住宅利活用促進税)は導入が決まっていますが、開始時期には観測の幅があります。最新の市の公表をご確認ください。
06じゃあ、どうすれば? ―“引き算”という発想
空き家対策というと、「補助金を出す」「新しい税を作る」という足し算が思い浮かびます。でも、根っこに近い解決はむしろ逆です。いま国が払っている税の割引(壊すと損・建てると得・新築びいき)を外す“引き算”です。
新しい財源も、新しい役所もいりません。すでにある「壊すな・建てろ」という後押しを抜くだけで、解体や中古活用が割に合うようになり、家の建ちすぎにブレーキがかかります。
07畳んだ土地は、価値に変えられる
立地が生きている街なかの空き家は、リノベして住まいとして再生する。一方で、人がもう住まなくなった土地は、無理に住宅で埋めず“畳む”——解体して農地や自然に戻すか、エネルギーを生む土地にする。この二段構えが、人口の減少と喧嘩しない数少ない道です。
人が住まなくなった土地に太陽光や蓄電所を置くというのは、過疎・空き家の「出口」と、再生可能エネルギーの「入口」が、同じ場所で交わるということ。畳むことは、終わりではなく次の用途のはじまりにできます。
私たちは、空き家を「とにかく埋める」ことだけが答えだとは考えていません。立地が生きた家は再生し、立地が失われた土地は住宅から畳んで、太陽光・蓄電・農地・自然へと戻していく。地域と一緒に、出口を設計することが大切だと思っています。
セブンヒルズゲートは、再生可能エネルギーと地方創生の現場に立つ立場から、こうした制度や土地の論点を「むずかしい話」で終わらせず、一緒に読み解きます。土地・地域のご相談は、お気軽にどうぞ。
出典・参考
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年)/「平成30年住宅・土地統計調査」(2018年)
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」関連情報(2023年12月改正を含む)
- 京都市「非居住住宅利活用促進税(いわゆる空き家税)」関連資料
- 各国・自治体の空き家対策に関する公表情報(イタリア/英国/米国 ほか)



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