Jクレジットの経済的評価
森林事業における炭素収益化の方針について
J-クレジットを採用しない判断とその根拠
要旨
- 当社が進める森林事業について、森林吸収系J-クレジットの経済性を評価しました。
- 森林1haあたりの年間手取りはおよそ6,800円にとどまり、木材および燃料の販売収益を下回ります。
- 当社はJ-クレジットを採用せず、炭素の価値は燃料供給契約の価格に織り込む方針とします。
01本件の背景
当社は広島県北広島町の町有林を基盤とする森林事業を進めております。本事業では木材の販売に加え、森林が吸収する二酸化炭素の価値をどのように収益へ結びつけるかが、事業設計上の主要な論点となっておりました。
選択肢のひとつとして、国のJ-クレジット制度(森林吸収系・森林経営活動)の活用を検討してまいりました。2026年度からの排出量取引制度(GX-ETS)の本格運用開始を控え、炭素の値付けをめぐる環境が変化していることを踏まえ、あらためて経済性の評価を行いました。その結果と当社の方針を以下のとおりお知らせいたします。
02評価の結果
スギ・ヒノキ人工林、年間収穫6立方メートル毎ヘクタール、事業規模1,000haを前提とした当社試算では、同一の森林から得られる収益源の順位は次のとおりです。
| 収益源 | 手取り | 経営上の制約 |
|---|---|---|
| A・B材の販売 | およそ +12,000 | なし |
| C・D材の燃料供給 | およそ +8,400 | 契約期間のみ |
| J-クレジット(標準前提) | およそ +6,800 | 認証終了後10年の継続義務、主伐の制約、土地転用の禁止 |
| J-クレジット(保守前提) | およそ −4,960 | 同上 |
J-クレジットは三つの収益源のうち最も小さい手取りでありながら、唯一、長期にわたる経営上の制約を伴います。加えて次の二点を確認いたしました。
第一に、認証量は収入と同義ではありません。森林由来クレジットは、これまでに認証された総量およそ87万トンに対し、販売・活用されたのは31万トンほどにとどまっており、売れ残りの負担は森林を保有する側が負う構造にあります。
第二に、価格には制度上の天井が生じています。2025年12月に排出枠価格の上限がおよそ4,300円、下限がおよそ1,700円と公表されました。義務履行を目的とする買い手が、これを大きく上回る価格で森林由来クレジットを購入する合理性は見込みにくい状況です。
03当社の方針
以上の評価に基づき、当社は森林事業においてJ-クレジットを採用いたしません。炭素の価値は、木質チップの燃料供給契約の価格に織り込む形で回収する方針とします。
燃料の買い手にとってのチップの値打ちは、それを用いることで使用せずに済んだ化石燃料費と、負担せずに済んだ炭素コストの合計です。この「回避された費用」を基準に価格を定めることで、炭素の価値は証書を介さず、燃料価格の一部として毎年収受されます。
炭素の環境価値は、一度売却すれば手元には残りません。クレジットとして切り売りすれば、同じ森林から産出する木材および燃料に炭素の価値を上乗せする根拠を失います。当社は、年間およそ6,800円の対価と引き換えに長期の制約を負うことは、事業を長く続ける力を損なうと判断いたしました。
なお本判断は、J-クレジット制度そのものの意義を否定するものではありません。森林の手入れを継続する誘因として制度が果たす役割は大きく、事業の規模・林齢構成・地域の需要によっては有効な選択肢となり得ます。当社の森林事業における前提のもとでの判断である旨、申し添えます。
04今後の取り組み
当社は引き続き、GX-ETSの義務対象となる事業者との燃料供給契約について、炭素コストの転嫁条項を含む価格設計を進めてまいります。あわせて、育成段階から参画いただく事業者に対する優先供給の枠組みについても検討を継続いたします。
評価の詳細は、当社サイトの解説記事「Jクレジットの経済的評価」に掲載しております。あわせてご参照ください。
当社が森林事業で見ているのは単年度の利回りではなく、100年先まで同じ手入れを続けられるかどうかです。炭素に値段がつくこと自体は歓迎すべき動きであり、値付けの方法には選択肢があります。当社は、証書ではなく契約に織り込む道を選びました。
Price the carbon in the contract, not in the certificate.
株式会社セブンヒルズゲート(SEVEN HILLS GATE , Inc.) 森林事業担当
〒731-5136 広島県広島市佐伯区楽々園4-8-2 岡ビル3F
ご連絡はお問い合わせフォームよりお願いいたします。
Web:https://7hg.co.jp
出典・注記
- J-クレジット制度 公式サイト(制度概要、方法論、認証量・販売実績)。
- 石川県「森林由来Jクレジット」創出マニュアル(2024年2月時点の取引価格レンジおよび登録要件)。
- GX-ETSにおける排出枠価格の上限・下限に関する公表(2025年12月)。
- 本文中の各数値は、スギ・ヒノキ人工林、年間収穫6立方メートル毎ヘクタール、事業規模1,000haを前提とした当社試算。


